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家族信託-家族信託の注意点-

家族信託その5-家族信託の注意点-

家族信託は,生前贈与,成年後見制度,遺言などとは違って柔軟な財産管理を行うことが可能ですが,注意点がいくつかあります。

まず,家族信託を組成するだけで直ちに節税の効果があるわけではありません。贈与税がかかることを回避したり,認知症発症後も相続税対策が可能であるという点では間接的に節税効果はあるかも知れません。
節税のために家族信託を組成するのであれば,税理士を含めた緻密な検討が必要になります。

税務関係についていえば,複数の収益物件のうち1つを信託財産として信託を組成した場合,信託財産と信託財産以外の財産との間で損益通算ができないということも注意が必要です。

また,二次相続,三次相続までも含めて組成を行う場合,何世代にもわたって拘束されることになります。これは家族信託のメリットの1つですが,ご家族の納得を得ていない場合には,かえってトラブルになる可能性も孕んでいるといえます。

その他,家族信託に理解のある金融機関が少ないのが現状です。金銭を信託財産とする場合,本来であれば,「委託者A受託者B信託口」などの口座名義で保管することが好ましいのですが,このような口座の開設をしてくれる金融機関は現時点においてはごくわずかです。

そのため,金銭を信託財産とする場合には弁護士などの専門家と十分に相談する必要があります。

家族信託-遺言との違い-

家族信託その4-遺言との違い-

今回は遺言と家族信託の違いについて説明します。

遺言では,亡くなった後の財産の配分を指定できますが,生きている間の財産管理については一切指示することができません。

また,遺言では,あくまで本人の遺産について一次相続についてのみ指定できるだけです。たとえば,「自分が亡くなった場合,自宅は妻に相続させる。その後,妻が亡くなった場合には,自宅は長男に相続させる。」という形で二次相続以降について記載しても効力はありません。

これに対し,家族信託では,「自分が生きている間はこうして欲しい。自分が死んだらこうして欲しい。」というように,生前の財産管理と死後の財産管理を同時に指示することができます。

また,遺言ではできない二次相続,三次相続についても財産の移転について指示を行うことが可能です。

家族信託-成年後見との違い-

家族信託その3-成年後見との違い-

今回は成年後見と家族信託の違いについて説明します。

成年後見制度は,本人の生活を守るために本人に代わって成年後見人が本人の財産管理を行う制度です。つまり,財産管理といっても,本人の財産からは本人の生活を維持するための最低限の生活費しか使うことができません。

そのため,次のような問題点が指摘されています。

本人が相続税対策(節税対策)を希望していても,(非課税範囲内でも)生前贈与はできず,相続税対策としての生命保険契約等もできず,お見舞いに来てくれた家族に対して交通費を支給したり,お孫さんに対してお年玉をあげることも原則としてできません。

また,専門家が成年後見人に選任された場合,成年後見人報酬の支払いが必要です。

この点,家族信託の方法によれば,本人が健康なうちに信託行為を設定して,信託行為の中で相続税対策を指示しておけば,受託者は相続税対策を実行できますし,お見舞いに来た家族に対する交通費の支給やお孫さんへのお年玉の支給を指示することも可能です。

このように,家族信託では成年後見制度ではできない柔軟な対策が可能です。

相続財産法人の法的地位と被相続人からの物件取得者との関係

最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決(最高裁判所民事判例集53巻1号128頁)

被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することの可否
       主   文
 原判決を破棄する。
 被上告人の控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
       理   由
 上告人の上告受理申立て理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 亡Dは、平成元年九月二五日、被上告人に対する四億円の債務を担保するため、原判決別紙物件目録記載の不動産に、極度額四億四〇〇〇万円の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を設定したが、その設定登記手続はされなかった。
 2 Dは、平成七年一月三〇日に死亡した。
 3 被上告人は、本件根抵当権について、仮登記を命ずる仮処分命令を得て、平成七年三月二〇日、平成元年九月二五日設定を原因とする根抵当権設定仮登記(以下「本件仮登記」という。)を了した。
 4 その後、Dの法定相続人全員が相続の放棄をし、平成八年四月一五日、被上告人の申立てにより、Aが亡D相続財産(上告人)の相続財産管理人に選任された。
 二 本件は、被上告人が、本件根抵当権につき、上告人に対し、本件仮登記に基づく本登記手続を請求するものである。原審は、大要次のように判示して、被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消し、被上告人の請求を認容した。
 相続財産法人は、被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位にあるから、被上告人と亡Dとの間に根抵当権設定契約がされている以上、被上告人の請求には理由がある。民法九五七条二項において準用する九二九条ただし書の「優先権を有する債権者」とは相続開始時までに対抗要件を備えている債権者を指すと解すべきであるから、これに当たらない被上告人が登記手続を求める実益はないといえなくもないが、実益がないというのも、飽くまで相続財産法人が存続し、右ただし書が適用される限りにおいてのことにすぎないばかりでなく、抵当権者が抵当権設定者に対して設定登記手続を請求する権利の実現を図ることができるのは当然のことである。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 1 相続人が存在しない場合(法定相続人の全員が相続の放棄をした場合を含む。)には、利害関係人等の請求によって選任される相続財産の管理人が相続財産の清算を行う。管理人は、債権申出期間の公告をした上で(民法九五七条一項)、相続財産をもって、各相続債権者に、その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない(同条二項において準用する九二九条本文)。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することができない(同条ただし書)。この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには、対抗要件を必要とする権利については、被相続人の死亡の時までに対抗要件を具備していることを要すると解するのが相当である。相続債権者間の優劣は、相続開始の時点である被相続人の死亡の時を基準として決するのが当然だからである。この理は、所論の引用する判例(大審院昭和一三年(オ)第二三八五号同一四年一二月二一日判決・民集一八巻一六二一頁)が、限定承認がされた場合について、現在の民法九二九条に相当する旧民法一〇三一条の解釈として判示するところであって、相続人が存在しない場合についてこれと別異に解すべき根拠を見いだすことができない。
 したがって、相続人が存在しない場合には(限定承認がされた場合も同じ。)、相続債権者は、被相続人からその生前に抵当権の設定を受けていたとしても、被相続人の死亡の時点において設定登記がされていなければ、他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができないし、被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても、これによって優先権を取得することはない(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)。
 2 相続財産の管理人は、すべての相続債権者及び受遺者のために法律に従って弁済を行うのであるから、弁済に際して、他の相続債権者及び受遺者に対して対抗することができない抵当権の優先権を承認することは許されない。そして、優先権の承認されない抵当権の設定登記がされると、そのことがその相続財産の換価(民法九五七条二項において準用する九三二条本文)をするのに障害となり、管理人による相続財産の清算に著しい支障を来すことが明らかである。したがって、管理人は、被相続人から抵当権の設定を受けた者からの設定登記手続請求を拒絶することができるし、また、これを拒絶する義務を他の相続債権者及び受遺者に対して負うものというべきである。
 以上の理由により、相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができないと解するのが相当である。限定承認がされた場合における限定承認者に対する設定登記手続請求も、これと同様である(前掲大審院判例を参照)。なお、原判決の引用する判例(最高裁昭和二七年(オ)第五一九号同二九年九月一〇日第二小法廷判決・裁判集民事一五号五一三頁)は、本件の問題とは事案を異にし、右に説示したところと抵触するものではない。
 3 したがって、被上告人には、本件根抵当権につき、上告人に対し、本件仮登記に基づく本登記手続を請求する権利がないものというべきである。
 四 以上のとおりであるから、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実によれば、被上告人の請求を棄却した第一審判決は正当として是認すべきものであって、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
        裁判長裁判官  井嶋一友
           裁判官  小野幹雄
           裁判官  遠藤光男
           裁判官  藤井正雄
           裁判官  大出峻郎

特別縁故者への遺産分与対象としての共有持分権

最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決(民集43巻10号1220頁)

共有者の一人が相続人なくして死亡したときとその持分の帰趨
       主   文
 原判決を破棄する。
 被上告人の控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
       理   由
 上告代理人出水順、同富阪毅、同松本研三、同東畠敏明の上告理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
  第一審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、もとAの所有であったが、同人の死亡により、同人の妻であるBとAの兄弟姉妹(代襲相続人を含む。)二八名、合計二九名の共有となった(Bの持分は登記簿上二二六八〇分の一五一二〇、すなわち三分の二と登記されている。)。Bは昭和五七年七月二八日死亡し、相続人がいなかったため、上告人らは、Bの特別縁故者として大阪家庭裁判所岸和田支部へ相続財産分与の申立てをし、同支部は、昭和六一年四月二八日、本件土地のBの持分の各二分の一を上告人らに分与する旨の審判をした。そこで、上告人らは、同年七月二二日、被上告人に対し、右審判を原因とする本件土地のBの持分の全部移転登記手続(上告人ら各二分の一あて)を申請したところ、被上告人は、同年八月五日、不動産登記法四九条二号に基づき事件が登記すべきものでないとの理由でこれを却下する旨の決定をした(以下「本件却下処分」という。)。
 二 原審は、右事実関係の下において、共有者の一人が相続人なくして死亡したときは、その持分は、民法(以下「法」という。)二五五条により当然他の共有者に帰属するのであり、法九五八条の三に基づく特別縁故者への財産分与の対象にはなりえないと解すべきであるから、Bの持分も右財産分与の対象にはならず、上告人らの登記申請は不動産登記法四九条二号により却下すべきであり、したがって、本件却下処分は適法であるとして、本件却下処分を取り消した第一審判決を取り消して、上告人らの請求を棄却した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
  昭和三七年法律第四〇号による改正前の法は、相続人不存在の場合の相続財産の国庫帰属に至る手続として、九五一条から九五八条において、相続財産法人の成立、相続財産管理人の選任、相続債権者及び受遺者に対する債権申出の公告、相続人捜索の公告の手続を規定し、九五九条一項において「前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続財産は、国庫に帰属する。」と規定していた。右一連の手続関係からみれば、右九五九条一項の規定は、相続人が存在しないこと、並びに、相続債権者及び受遺者との関係において一切の清算手続を終了した上、なお相続財産がこれを承継すべき者のないまま残存することが確定した場合に、右財産が国庫に帰属することを定めたものと解すべきである。
  他方、法二五五条は、「共有者ノ一人カ……相続人ナクシテ死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ共有者ニ帰属ス」と規定しているが、この規定は、相続財産が共有持分の場合にも相続人不存在の場合の前記取扱いを貫くと、国と他の共有者との間に共有関係が生じ、国としても財産管理上の手数がかかるなど不便であり、また、そうすべき実益もないので、むしろ、そのような場合にはその持分を他の共有者に帰属させた方がよいという考慮から、相続財産の国庫帰属に対する例外として設けられたものであり、法二五五条は法九五九条一項の特別規定であったと解すべきである。したがって、法二五五条により共有持分である相続財産が他の共有者に帰属する時期は、相続財産が国庫に帰属する時期と時点を同じくするものであり、前記清算後なお当該相続財産が承継すべき者のないまま残存することが確定したときということになり、法二五五条にいう「相続人ナクシテ死亡シタルトキ」とは、相続人が存在しないこと、並びに、当該共有持分が前記清算後なお承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときと解するのが相当である。
  ところで、昭和三七年法律第四〇号による法の一部改正により、特別縁故者に対する財産分与に関する法九五八条の三の規定が、相続財産の国庫帰属に至る一連の手続の中に新たに設けられたのであるが、同規定は、本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き、右特別縁故者を保護するとともに、特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり、そこには、被相続人の合理的意思を推測探究し、いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。
  そして、右九五八条の三の規定の新設に伴い、従前の法九五九条一項の規定が法九五九条として「前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。」と改められ、その結果、相続人なくして死亡した者の相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ、従前の法九五九条一項の特別規定である法二五五条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。この場合、右共有持分は法二五五条により当然に他の共有者に帰属し、法九五八条の三に基づく特別縁故者への財産分与の対象にはなりえないと解するとすれば、共有持分以外の相続財産は右財産分与の対象となるのに、共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないことになり、同じ相続財産でありながら何故に区別して取り扱うのか合理的な理由がないのみならず、共有持分である相続財産であっても、相続債権者や受遺者に対する弁済のため必要があるときは、相続財産管理人は、これを換価することができるところ、これを換価して弁済したのちに残った現金については特別縁故者への財産分与の対象となるのに、換価しなかった共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないということになり、不合理である。さらに、被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が、たまたま遺言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて、家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず、相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも、いかにも不合理である。これに対し、右のような場合には、共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり、右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には、特別縁故者を保護することが可能となり、被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに、家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり、具体的妥当性を図ることができるのである。
  したがって、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法九五八条の三の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法二五五条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。
 四 以上によれば、大阪家庭裁判所岸和田支部の財産分与の審判を原因とする上告人らの登記申請を事件が登記すべきものでないとしてした本件却下処分は違法であるところ、これを適法であるとした原判決には、法二五五条及び法九五八条の三の各規定の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件却下処分の取消しを求める上告人らの本訴請求は正当として認容すべきものであるから、これと同旨の第一審判決は正当であり、被上告人の控訴は理由がないものとして、これを棄却すべきである。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官香川保一の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官香川保一の反対意見は、次のとおりである。
 私は、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却すべきであるとする多数意見に、到底賛成することができない。その理由は、次のとおりである。
 一 昭和三七年法律第四〇号による法の一部改正前において、法二五五条にいう「相続人ナクシテ死亡シタルトキ」とは、右改正前の法九五八条(相続人捜索の公告)の期間内に相続人である権利を主張する者がないとき(以下「相続人不存在確定のとき」という。)であり、他方右改正前の法九五九条一項により相続財産が国庫に帰属するときも、右の法二五五条の場合と同様であることはいうまでもない。さらに、この場合、法二五五条は、法九五九条一項の特別規定、すなわち相続財産である共有持分が他の共有者に当然帰属するものとして、国庫帰属に対する例外として規定されたものであることは多数意見のとおりである。そして、以上のことは、右の改正前後においても実質的に同様であることは明らかである。
 二 しかるところ、多数意見は、右の改正により「法九五八条の三の規定の新設に伴い、従前の法九五九条一項の規定が法九五九条として『前条の規定によって処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。』と改められ、その結果、……相続財産の国庫帰属時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ、従前の法九五九条一項の特別規定である法二五五条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。」として、相続人不存在確定のときにおいて、右新設の法九五八条の三が法二五五条よりも優先適用され、共有持分が特別縁故者に分与されなかった場合にはじめて他の共有者に帰属することとなるものとしているのである。しかし、法文解釈として右のように解する多数意見には、到底賛同することができない。
  すなわち、多数意見も認めているとおり、右の改正前において、法二五五条と法九五九条一項の適用されるのが相続人不存在確定のときであり、この場合前者が後者の特別規定であることから前者が優先して適用される関係にあるところ、右の改正による新設の法九五八条の三の規定も、その適用されるのが相続人不存在確定のときであって、改正前の法九五九条一項の規定と同じであるから、文理上その適用の優劣を明らかにするため、当然のことながら法九五九条一項を改めて法九五九条とし、これを「前条(法九五八条の三)の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。」としたのである。換言すれば、多数意見のいうとおり、「相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ」たのであるが、このことは事理の当然のことである。そして、法九五八条の三は、清算後残存する相続財産一般についての規定であり、法二五五条は、右の相続財産中の特別の共有持分についての特別規定であって(この理は、多数意見が法二五五条を国庫帰属に関する規定の特別規定であるとするのと同じである。)、解釈上法二五五条が優先して適用されるものとするのが当然であるから(このことは、法九五八条の三の規定が新設された後である昭和四一年法律第九三号による借家法の改正により新設された同法七条ノ二第一項の規定、すなわち「貸借人ガ相続人ナクシテ死亡シタル場合」に同項掲記の者が賃借人の権利義務を承継する旨の規定が法九五八条の三の規定より優先して適用されるのも、借家法七条ノ二の規定が法九五八条の三の一般規定に対する特別規定であるからである。)、もし、多数意見のように、法九五八条の三が法二五五条よりも先に適用されるとするならば、法九五九条一項の改正と同じく、条文上法九五九条の「前条の規定によつて処分されなかつた相続財産」から共有持分を除くか又は法二五五条の他の共有者に帰属する持分を「法九五八条の三の規定によつて処分されなかつた持分」と改めるべきであるが、かかる改正がされていない以上少くとも条文の文理解釈からは、多数意見のように、「相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ、従前の法九五九条一項の特別規定である法二五五条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。」とすることは、論理上理解し難いし、その根拠を法二五五条が従前の法九五九条(又は改正後の九五九条)の特別規定であることに求めるかのごときことも肯認し難いところである。
  以上のとおり特別規定である法二五五条よりも一般規定である法九五八条の三の規定が優先適用されるとする解釈は、通常は許されるものではない。
 三 もちろん、法文の文理上からする解釈が極めて一般的に不合理であり、妥当性を欠くものである場合には、文理上の解釈を採らず、合理的、妥当な解釈が許されるものであるところ、法九五八条の三を法二五五条よりも優先適用すべきであるとする多数意見の理由とする点は、(1)相続財産のうち共有持分が特別縁故者に対する財産分与の対象とならないことの合理的な理由がなく、(2)共有持分が債権者に対する弁済のため換価された場合の弁済後の残存現金が右財産分与の対象となるのに、換価されない場合にその分与の対象とならないことは不合理であり、さらに(3)被相続人の遺言等がなされていなかった特別縁故者に対する保護が共有持分についてされないことは、不合理であり、家庭裁判所の相当性の判断によって特別縁故者と他の共有者のいずれに帰属させるのが妥当かを決するのが具体的妥当性を図り得て合理的であるということである。
  しかし、もともと法九五八条の三は、相続人不存在確定のときに本来国庫に帰属すべき相続財産については、国庫帰属よりも相当な特別縁故者に帰属させる途を開くのが妥当であるとして、いわば恩恵的に分与しようとする趣旨のものであって、遺贈ないし死因贈与の制度の補充を目的とするものではない(むしろ、一般的には、遺言等をせずして死亡した被相続人の意思を尊重すべきである。)。他方、法二五五条の趣旨は、本来共有関係なるものはいわば完全な財産権が他の共有持分によって制約されているものであるから、その共有持分が放棄され又は相続人不存在確定のときには、右の制約がなくなるものとして当該共有持分が他の共有者に帰属するものとするのが性質上適切妥当であるのみならず、共有者は、むしろ当該共有財産に関し相互連帯的な特別関係にあるともいえるからであり、共有関係の解消に寄与する立法政策的配慮も否定し得ないところであるから、共有持分を特別縁故者への分与の対象財産としないことをもって不合理とすべきいわれはない。まして清算のための換価については、債権者の利益を他の共有者のそれよりも尊重すべきが当然であり、残余の換価代金を他の共有者に帰属させる必要性も全くないのであって、この点をとらえて前記の不合理を云々することは当たらない。以上要するに、法二五五条の規定が法文の文理に従って法九五八条の三の規定より優先適用されるとすることが、極めて不合理で妥当性を欠く理由を見出すことは、到底できないものと考える。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官  島谷六郎
            裁判官  牧 圭次
            裁判官  藤島 昭
            裁判官  香川保一
            裁判官  奧野久之

生存配偶者の姻族関係終了と祭祀承継

東京高裁昭和62年10月8日判決(家庭裁判月報40巻3号45頁)

死亡配偶者の遺骨の所有権はその祭祀を主宰する生存配偶者に原始的に帰属するとされた事例
       主   文
  本件控訴を棄却する。
  控訴人の当審における予備的反訴請求を棄却する。
  控訴費用は,控訴人の負担とする。
       事   実
一 控訴人は,「1原判決中,控訴人に関する部分を次のとおり変更する。(一)被控訴人の本訴請求を棄却する。(二)控訴人と被控訴人との間において,植田家の祖先及び亡植田正夫の祭祀主宰者が植田大次郎(第一審本訴被告,同反訴原告)であることを確認する。2予備的に,被控訴人は控訴人に対し,亡植田正夫の焼骨を分骨せよ(当審において右請求を追加した。)。3訴訟費用は,第一,二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め,被控訴代理人は,控訴棄却及び控訴人の当審における予備的反訴請求を棄却する旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠は,左記のとおり付加するほかは,原判決事実摘示と同一であるから,その記載を引用する。
 (控訴人の当審における予備的反訴請求の請求原因)
  仮に被控訴人に亡植田正夫の焼骨を引き取つて改葬する権利があるとしても,控訴人にもまた右焼骨を祭祀承継者である植田大次郎に管理させるべきことを求める権利があるから,右焼骨につきその分骨を求めるものである。
       理   由
第一 本訴について
一 植田正夫(以下「正夫」という。)が亡植田宗重(以下「宗重」という。)と第一審被告(反訴原告)植田つる(以下「つる」という。)との間の長男であり,第一審被告(反訴原告)植田大次郎(以下「大次郎」という。),同植田努,同植田等,同植田武彦,控訴人がそれぞれ宗重とつるとの間の次男,三男,四男,五男,長女であること,昭和19年10月1日宗重が死亡し,正夫がその家督を相続したこと,昭和28年被控訴人が正夫と婚姻し,その間に長女秀子をもうけたが,昭和49年8月23日正夫が死亡し,被控訴人がその葬儀の喪主をつとめ,正夫の焼骨を分離前第一審被告徳安寺(東京都台東区○○○×丁目×番××号所在)の墓地内にある「植田家之墓」と刻した墳墓に納めたこと,正夫がその生前右墳墓を祭祀財産として承継し,植田家祖先の祭祀を主宰していたことは当事者間に争いがない。
二 原審における被控訴人本人尋問の結果により成立の認められる甲第1号証,成立に争いのない乙第1号証及び右被控訴人本人尋問並びに原審における大次郎本人尋問の各結果に本件弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。
 (1)被控訴人が正夫の葬儀の喪主をつとめ,その焼骨を徳安寺内の前記墓に納めたことについては,親族らのなに人にも異論がなく,右徳安寺との関係においては植田家之墓の施主名義が被控訴人に改められ,以後正夫の1周忌,3回忌,7回忌その他盆などの法事についても被控訴人が施主をつとめたが,これについてもまた親族のなに人からも異論が出なかつたこと,
(2)被控訴人は正夫死亡後も従前どおり東京都江戸川区○○○×丁目の住居においてつると生活を共にし,右住居には植田家祖先の位牌を納めた仏壇があつたが,正夫の死亡後被控訴人が新たに仏壇を買い求め,右祖先の位牌と共に正夫の位牌を納めて礼拝して来たこと,
(3)正夫はゴルフ場での競技中に急死したため(享年51歳),あらかじめ植田家祖先の祭祀を主宰する承継者を指定しなかつたこと,
(4)その後被控訴人とつるとの折合いが悪くなり,昭和57年6月16日被控訴人は姻族関係を終了させる旨の意思表示をし,同月26日ころつるは前記住居を出て控訴人方に身を寄せるにいたつたこと(右姻族関係終了の意思表示がなされたことは当事者間に争いがない。),
(5)同年9月ころ被控訴人が徳安寺に対し植田家祖先の祭祀についての施主を交替したい旨申し出たため,大次郎がこれに代つて施主をつとめることとなり,親族のなに人もこれに異論がなかつたこと,
(6)昭和58年1月ころ被控訴人は徳安寺に対し被控訴人方の仏壇に納めてある正夫の位牌以外の位牌を預かつてほしい旨申し入れたが断わられ,結局,昭和59年4月30日ころ大次郎が被控訴人から正夫の位牌を除く祖先の位牌と仏壇の引渡を受け,他方,被控訴人は新たに仏壇を購入してこれに正夫の位牌を納めるとともに,東京都葛飾区○○○×丁目×X番××号所在の桂林寺に正夫の墳墓を建立し,その焼骨を改葬する計画を立て,徳安寺に対し改葬の承認を求める旨の書面を提出したこと,
  以上の事実が認められ,右認定を左右するに足りる証拠はない。
三 以上認定の事実によれば,被控訴人は正夫の死亡に当たり喪主としてその葬儀を営み,これを埋葬するとともに同人の供養等その祭祀を主宰することを開始し,これとは別に植田家祖先の祭祀については,その主宰者が正式にきまらないまま,事実上正夫のあとを受けてこれを主宰して来たが,前記のとおり姻族関係終了の意思表示をした時をもつて右祖先の祭祀を事実上主宰していくことについてはこれを止めるにいたつたものということができる。
 〔要 旨1〕
  このように,夫の死亡後その生存配偶者が原始的にその祭祀を主宰することは,婚姻夫婦(及びその間の子)をもつて家族関係形成の一つの原初形態(いわゆる核家族)としているわが民法の法意(民法739条1項,750条,戸籍法6条,74条1号参照)及び近時のわが国の慣習(たとえば,婚姻により生家を出て新たに家族関係を形成したのち死亡した次,三男等の生存配偶者が原始的に亡夫の祭祀を主宰していることに多くその例がみられる。)に徴し,法的にも承認されて然るべきものと解され,その場合,亡夫の遺体ないし遺骨が右祭祀財産に属すべきものであることは条理上当然であるから,配偶者の遺体ないし遺骨の所有権(その実体は,祭祀のためにこれを排他的に支配,管理する権利)は,通常の遺産相続によることなく,その祭祀を主宰する生存配偶者に原始的に帰属し,次いでその子によて承継されていくべきものと解するのが相当である。
 したがつて,本件においては被控訴人は正夫の死亡に伴い,その祭祀を主宰する者として本件焼骨の所有権を原始的に取得していたものとみるべきであり,右焼骨が一たん植田家祖先伝来の墳墓に納められたとしても,この理にかわりはないから,被控訴人がこれを争う控訴人に対し右焼骨の引取り及び改葬についての妨害の排除を求める本訴請求は理由があるものといわなければならず,被控訴人が前示のとおり姻族関係終了の意思表示をしたのちに植田家の墳墓から正夫の焼骨を引き取つてこれを改葬せんとすることも格別これを不当視すべきいわれはない。
 四 控訴人は,抗弁として,被控訴人が前示のとおり姻族関係終了の意思表示をしたことにより祭祀主宰者の地位を喪失し,したがつてまた正夫の焼骨についての権利も失つた旨主張するが,さきに説示したとおり,被控訴人は右意思表示により植田家祖先の祭祀につき事実上これを主宰して来たことを止めるにいたつたものにすぎず,正夫の祭祀についてはそのこととは関係なく同人の死亡後原始的にこれを主宰しているものとみるべきであるから,右抗弁はその前提を異にし,失当というほかはない。
 五 又,被控訴人は,抗弁として,大次郎が植田家の祭祀主宰者と定められたので,正夫の焼骨についてもその権利を取得した旨主張し,さきに認定したとおり,大次郎が植田家祖先の祭祀を主宰することとすることについては,親族のなに人からも異論がなく,同人が昭和59年4月30日ころ被控訴人から正夫の位碑を除く祖先の位碑と仏壇を引き取つた時をもつて,同人を植田家祖先の祭祀を主宰すべきものに定める旨関係者全員の間で黙示の協議が成立したものと認めることができ,また,このように関係者の協議によつてこれを定めることが民法897条の法意を逸脱するものではないと考えられるが,同人が今後事実上正夫の供養にも当たることはともかく,同人によつて承認された祭祀財産のうちには正夫の焼骨,位碑が含まれていないものとみるべきことはさきにも説示したところによりおのずから明らかであるから,右抗弁も採用の限りではない。
第二 反訴について
 一 被控訴人は,控訴人が被控訴人との間において正夫及び植田家祖先の祭祀主宰者が大次郎であることの確認を求める反訴請求は,家庭裁判所の職分に属する事項を求めるものであつて,不適法である旨主張するが,右反訴請求は祭祀主宰者たる地位を形成的に定めることを求めているのではなく,関係者間の協議によつてすでに定まつている右地位の確認を求めているものであるから,被控訴人の右主張は理由がない。
二 ところで,被控訴人が控訴人の反訴にかかる右請求につき争つていることは,本件弁論の全趣旨により明らかである。
三 そこで,本案につき判断するに,大次郎が植田家祖先の祭祀の主宰者に定められたことはさきに認定したとおりであるが,その祭祀財産のうちには正夫の焼骨,位碑が含まれておらず,正夫の祭祀については被控訴人においてこれを主宰しているものとみるべきことはこれまたさきに説示したとおりであるから,右反訴請求は,大次郎が植田家祖先の祭祀の主宰者であることの確認を求める限度においては理由があるが,その余の部分については理由がない。
 四 次に,控訴人の当審における予備的反訴の請求については,関係者の間の協議によつて右請求の趣旨を定めることはともかく,そもそもこのような請求を認容すべき法的根拠がないから,これまた理由を欠くものというほかはない。
第三 以上の次第で,被控訴人の本訴請求は,これを正当として認容すべきであり,控訴人の反訴請求は,さきに判示した限度で正当として認容すべきであるが,その余は失当として棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であつて,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,控訴人の当審における予備的反訴請求も失当であるから,これを棄却し,控訴費用の負担につき民事訴訟法95条,89条を適用して,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 中村修三 裁判官 山中紀行 関野杜滋子)

排除原因としての「重大な侮辱」

東京高裁平成4年12月11日決定(判時1448号130頁)

娘が暴力団員と婚姻し、父母が婚姻に反対なのに父の名で披露宴の招待状を出すなどしたときに、娘を推定相続人から廃除できるとされた事例
       主   文
 原審判を取り消す。
 相手方を抗告人らの各推定相続人から廃除する。
       理   由
 一 本件抗告の趣旨は、第一次的に、主文第一、二項と同旨の裁判を求め、第二次的に、「本件を東京家庭裁判所に差し戻す。」との裁判を求めるものであり、その理由の要旨は次のとおりである。
 1 相手方の行状は、「たちの悪い親泣かせ」であり、廃除原因である「重大な侮辱」・「著しい非行」に当たることは明らかである。
 すなわち、相手方は、小・中学校のころから、級友の学用品の窃盗、万引き、家からの金員持ち出し、家出、浮浪・徘徊を繰り返し、正当な親の監督に服さず、少年院等における処遇を受けても行いを改めず、高校生になってからも、全く通学せずに家出・浮浪を繰り返し、不良交友関係や万引き等の非行がますます深刻化し、家に寄りつかず友人方を転々したり、スナック等で稼働し、暴力団組織の一員で犯罪歴のある男性と同棲し、転落の度を深め、ついには、暴力団幹部で犯罪歴のある乙山夏夫と婚姻するに至り、社会から脱落するに至った。抗告人らは、これまで相手方を援助する努力をしてきたものの、右婚姻を知って、相手方の行状にとうてい耐えられなくなった。
 2 抗告人甲野太郎は、多数の会社を経営し、相手方が暴力団関係者と婚姻した事実のもたらす影響は深刻であり、前記の相手方の行状がその社会的な地位・信用を崩壊させるに十分であることは明らかである。右婚姻により、抗告人らと相手方間には決定的な亀裂・断絶が生じ、相手方には改悛の望みもない。また、親子として行き来が断絶して七、八年を経過したことからしても、抗告人らと相手方の家族協同関係はすでに破壊され、回復の可能性はないというべきである。
 3 原審判の後に、乙山夏夫の父が抗告人甲野太郎の名をかたって連名で夏夫と相手方の結婚披露宴の案内状を印刷し、関係者に送付したことが判明した。このことは、夏夫やその両親が抗告人らに対し金目当てで交際を迫るものであり、相手方が金目当てに利用されようとしていることを示している。また、夏夫は暴力団の組員をやめたと述べる時期以後も二、三回組に出入りし、けっして暴力団とは縁を切っていない事実も判明した。相手方と抗告人らの関係修復の可能性は完全になくなったといわなければならない。
 以上の事実によれば、相手方に廃除原因となる事実があることは明らかであり、相手方を相続から廃除したいとする抗告人らの意思は充分尊重されるべきである。
 4 抗告人らは、相手方が健全な成長を遂げるべくあらゆる手段を講じて養育に当たり、姉や弟に対する場合に比して愛情に欠ける点があったわけではない。相手方は生まれながらにして強度の拒食症であり、抗告人らは相手方を生かすため多大の努力をした。また、抗告人らは相手方を教育するため多大の努力をし、費用を負担したばかりか、窃盗等の後始末に追われ、家出した相手方の捜索、適切な治療、診断を得るため医師、施設を訪問したり、相手方を海外留学等させるため、多額の出費を余儀なくされた。相手方には、時、所をわきまえない盗癖と家出・浮浪癖があり、落ち着きに乏しく、注意が散漫であるという特徴があったが、その主症状は過動性と虚言癖であり、過動性行動異常との診断がなされていた。その原因を確定することはできないが、子供が独自の先天的素質をもとにして、環境と相互にかかわり合う中で成長するものであることを重視すべきであり、過動性行動異常については、不良な家庭環境との関連は乏しく、先天的素質に基づくことが多く、しかもその症状は一六歳以降に消失するといわれている。このことからすると、相手方の非行につき親の養育態度を責めることはできない。相手方が抗告人らから愛情を注がれることが少なかったとか、受容されなかったことが基本になって相手方が非行を繰り返したということはできない。
 相手方は、少なくとも一六歳以後の行為については十分に責任能力を有し、右責任能力を備えた後の外形的な行為が「重大な侮辱」・「著しい非行」に当たるか否かによって相手方を廃除すべきか否かの判断をすべきである。右の判断は規範的な判断であって、合目的的な裁量の要素を見出すことは困難であり、抗告人らにも右非行に関し落ち度があったか否かを考慮すべきではない。
 二 当裁判所の判断
 1 相手方の成育歴、非行の経緯は、原審判の理由説示(原審判一丁裏九行目から同五丁表一行目まで。ただし、同二丁裏二行目の「問題行動を起こし、」の次に「翌年には同校を退学させられ、その後編入した同地の女学校においても同様の問題行動があり、」を加える。)のとおりであるから、これを引用する。
 2 本件家事事件記録及び当審記録によれば、相手方が昭和六二年二月一七日中等少年院を仮退院した以後の相手方と抗告人らの関係等に関し、次の事実が認められる。
 (一) 相手方は、昭和六二年二月一七日中等少年院を仮退院し、抗告人らのもとに帰ったものの、約一週間後には少年鑑別所で知り合った友人方に身を寄せ、抗告人らは、かつて相手方の捜索等に協力してくれた警察官の援助を得て、その所在を確認し、右友人方の生活環境を調べ、右警察官の助言をいれて事態を静観することとした。相手方は、右友人方で生活し、その夫の経営するスナックに勤めたが、その後、友人方を出て、暴力団員の丙川五郎、次いでタクシーの運転手と同居を始め、昭和六三年六月ころから、キャバレー「チェリー」に勤めるようになり、乙山夏夫とも顔見知りとなった。同人は、当時、暴力団丁原会戊田家戊原組の組員・中堅幹部であり、暴力行為等処罰に関する法律違反により懲役刑(一年、執行猶予四年)に処せられたことがあるほか、傷害罪により罰金刑に処せられた前科があった。
 (二) 相手方は、平成元年始めころから乙山と親密に交際するようになり、同年九月には東京都台東区戊川にある同人方で同居を始め、同年一二月二二日に婚姻の届出をし、翌年一月には同区三ノ輪の乙田荘に転居した。抗告人花子は相手方と電話で話合うこともあったが、相手方は、同抗告人の意見を聞き入れたり、抗告人らのもとに戻る意向を示すことはなく、乙山と同居中に家賃が払えないといって、抗告人花子から二五万円の援助を受けたこともあった。相手方は乙山を伴って、抗告人らの家に赴いたことがあったが、抗告人花子が同人と会うことを拒み、結局、同人も抗告人らとの接触を求めず、同人と抗告人らとは顔を合わせることもなかった。
 抗告人らと相手方との交流は、相手方が前示中等少年院からの仮退院後家出をして以来は、平成二年一一月一日、乙山から暴行を受けて短時間抗告人らの許に戻ったことがあったこと、右より前に抗告人花子が相手方と電話で話したことがあったことがあるほかは没交渉な状況が続いている。
 (三) 相手方と乙山との夫婦関係は、同人が暴力を振るうこともあって、必ずしも円満とはいいがたいが、両名は、平成二年一一月ころから乙山の郷里である茨城県丙田市で生活し、その後乙山がトラック運転手として働き始め、相手方が平成三年二月と七月と二回家出をすることがあったものの短期間で家庭に戻り、平成四年五月二日には結婚披露宴を行うに至った。そして、相手方と右乙山とは右披露宴をするに当たっては、抗告人らが右婚姻に反対であることを十分に知りながら、披露宴の招待状に招待者として乙山の父乙山松夫と連名で抗告人太郎の名も印刷して抗告人らの知人等にも送付した。
 3 ところで、民法第八九二条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むものと解すべきである。
 本件において、前記認定の事実によれば、相手方は、小学校の低学年のころから問題行動を起こすようになり、中学校及び高校学校に在学中を通じて、家出、怠学、犯罪性のある者等との交友等の虞犯事件を繰り返して起こし、少年院送致を含む数多くの保護処分を受け、更には自らの行動について責任をもつべき満一八歳に達した後においても、スナックやキャバレーに勤務したり、暴力団員の丙川五郎と同棲し、次いで前科のある暴力団の中堅幹部である乙山夏夫と同棲し、その挙げ句、同人との婚姻の届出をし、その披露宴をするに当たっては、抗告人らが右婚姻に反対であることを知悉していながら、披露宴の招待状に招待者として乙山の父乙山松夫と連名で抗告人甲野太郎の名を印刷して抗告人らの知人等にも送付するに至るという行動に出たものである。そして、このような相手方の小・中・高等学校在学中の一連の行動について、抗告人らは親として最善の努力をしたが、その効果はなく、結局、相手方は、抗告人ら家族と価値観を共有するに至らなかった点はさておいても、右家族に対する帰属感を持つどころか、反社会的集団への帰属感を強め、かかる集団である暴力団の一員であった者と婚姻するに至り、しかもそのことを抗告人らの知人にも知れ渡るような方法で公表したものであって、相手方のこれら一連の行為により、抗告人らが多大な精神的苦痛を受け、また、その名誉が毀損され、その結果抗告人らと相手方との家族的協同生活関係が全く破壊されるに至り、今後もその修復が著しく困難な状況となっているといえる。そして、相手方に改心の意思が、抗告人らに宥恕の意思があることを推認させる事実関係もないから、抗告人らの本件廃除の申立は理由があるものというべきである。したがって、これと異なり抗告人らの本件申立を理由がないとしてこれを棄却した原審判には、民法八九二条の解釈適用を誤った違法があるものというべきであるから、これを取り消し、当審において審判するのを相当と認め、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 柴田保幸 裁判官 長野益三 犬飼眞二)

家族信託-生前贈与との違い-

家族信託その2-生前贈与との違い-

今回は生前贈与と家族信託の違いについて説明します。

生前贈与は,少しでも遺産を減らしておいて相続税を節約する目的で行う場合や,将来の認知症を心配して,早めに子どもに財産管理を任せるために行う場合などがあります。

しかし,普通に財産を贈与すると贈与税がかかります,贈与税は相続税よりも税率が高いため,節税の観点からはあまり好ましくありません。「相続時精算課税制度」の利用も考えられますが,利用には限度額があります。

また,家族で会社を経営している場合,株価が低いときに株式を子どもに贈与したいと考える経営者がいますが,株式を贈与してしまうと会社に対する支配権を失ってしまうという問題点があります。

逆に,判断能力が鈍ってきたので,早く子どもに会社の実権を委譲したいのだけれども,今,株式を贈与すると株価総額が高いために高額な贈与税が発生してしまうという場合もあります。

このような場合,家族信託が有効です。

まず,家族信託は,「委託者」から「受託者」へ信託財産の名義を移転しても,「委託者」=「受益者」であれば贈与税は発生しません。

ですから,「委託者」と「受益者」を自分として,「受託者」を子どもとして不動産などの財産を信託すれば,贈与税がかからずに不動産の管理運営を子どもに任せることが可能です。

会社の株式については,株価が低いので株式を子どもに贈与したいが,会社の支配権をまだ渡したくないという場合には,「委託者」兼「受託者」を自分として,「受益者」を子どもとして信託を組成すれば,株式の財産的価値のみが子どもに移転しますが,会社の支配権(議決権)は自分の元に残せます。

逆に,株式をすぐにでも子どもに渡したいが株価総額が高額であるという場合には,「委託者」兼「受益者」を自分として,「受託者」を子どもとして信託を組成すれば,贈与税が発生しない形で,支配権を子どもに委譲することができます。この場合,議決権行使は子どもが行うことになります。

遺言書の破棄・隠匿行為と相続欠格

最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決(民集51巻1号184頁)

相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄隠匿行為と相続欠格事由について
       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人らの負担とする。
       理   由
 上告代理人山田齊の上告理由第一の一について
 相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。けだし、同条五号の趣旨は遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにあるが(最高裁昭和五五年(オ)第五九六号同五六年四月三日第二小法廷判決・民集三五巻三号四三一頁参照)、遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条五号の趣旨に沿わないからである。
 以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰するものであり、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
    最高裁判所第三小法廷
        裁判長裁判官  尾崎行信
           裁判官  園部逸夫
           裁判官  可部恒雄
           裁判官  大野正男
           裁判官  千種秀夫

家族信託-概要-

家族信託その1-概要-

「家族信託」をご存知でしょうか?

信託法による信託のうち,営業として行う信託を「商事信託」といい,営業として行わないものを「民事信託」といいます。

「家族信託」は民事信託のうち,ご家族に財産管理を任せるものを指します。

「家族信託」を利用すると,生前の財産管理をご家族に依頼したり,死後の財産管理をご家族に依頼したり,死後の遺産の配分を決めたりすることができます。

これまでは,資産管理,資産承継といえば,生前贈与,成年後見制度,遺言などで行ってきました。

しかし,いずれの制度も難点があり,「かゆいところに手が届かない」制度でした。「家族信託」はこれまで難しかった「かゆい部分」にも手が届く柔軟な解決が可能です。

「家族信託」においては,「委託者」,「受託者」,「受益者」という三者間の法律関係になります。

三者間の法律関係というと一見複雑そうに見えますが,そんなことはありません。「家族信託」の考え方を理解すれば一般の方でも十分に理解することが可能です。

今後,このコラムにおいて,何回かに分けて「家族信託」について解説していきたいと思います。

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